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大阪高等裁判所 昭和54年(行コ)52号 判決 1982年2月25日

控訴人(原告) 中橋秀二 外一名

被控訴人(被告) 大阪陸運局長 人事院

訴訟代理人 上野国夫 高須要子 日鷹修一 外八名

主文

一  本件各控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴代理人らは「1 原判決中控訴人らに関する部分を取消す。2 被控訴人大阪陸運局長が控訴人らに対して昭和四四年一二月二六日付でした各懲戒処分をいずれも取消す。3 被控訴人人事院が控訴人らに対して昭和五〇年五月二九日付でした各請求棄却の判定(人事院指令一三―二二)をいずれも取消す。4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人らは主文と同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠関係は、次に訂正・付加するほか、原判決事実摘示中控訴人らに関する部分のとおりであるから、これを引用する。

(訂正)

1  原判決三枚目裏四行目の「違反し、」の次に「同法」を挿入する。

2  同四枚目表二行目の「及び判定は後記五記載の事由により」を「はいずれも正当な処分事由なしになされたもので」と、三行目の「よつても」を「より」とそれぞれ改める。

3  同六枚目裏二行目の「対する」の次に「被控訴人らの」を挿入し、五行目から一二行目までを削除する。

4  同七枚目表九行目の「右期間が不当に長期に亘つている」を「著しく遅延している」と、裏五行目の「抗弁」を「被控訴人局長の抗弁」とそれぞれ改める。

5  同八枚目裏一行目の「第八回定期大会」の次に「(以下、第八回大会という。)」を挿入する。

6  同一六枚目裏末行の「同法条項」を「同条項」と改める。

7  同一八枚目表一行目の「認否等」を「控訴人らの認否」と改め、一〇行目の次に「五 控訴人らの主張」を挿入し、一一行目の「5 本件ストライキの背景と経緯」を「1 本件職場大会の背景とその具体的状況」と改め裏五行目の「その機関としては、」の次に「各加盟組合からの二名の代議員と役員で構成される最高議決機関としての拡大評議員会、」を挿入し、六行目の「決議機関」を「議決機関」と、九行目の「万場一致」を「満場一致」とそれぞれ改める。

8  同一九枚目裏四行目の「国公共闘は、」の次に「これより先の」を挿入する。

9  同三三枚目表一二行目の「分会長」を「分会長である控訴人北谷」と、裏一行目の「分会長」を「控訴人北谷」と、三行目の「同人」を「尾仲総務課長」とそれぞれ改める。

10  同四〇枚目表一行目から三行目までを削除し、四行目の「1」を「2」と、裏一行目の「「制約という名の実は剥奪をも可能なのだ」を「「制約する」という名のもとに実は剥奪をも可能」とそれぞれ改め、八行目の「右のような」の次に「生存権的性格と自由権的性格の」を挿入する。

11  同四四枚目裏一〇行目の「からなのか」を「か」と改める。

12  同四五枚目裏三行目の「比較較量」を「比較衡量」と、一〇行目の「三六条」を「三七条」とそれぞれ改める。

13  同四六枚目表四行目の「場合」の次に「で」を挿入する。

14  同四八枚目表八行目の「右」の次に「全農林警職法事件」を、一二行目の「いずれも」の次に「、争議行為禁止条項が」を、裏一一行目の「できない」の次に「という」をそれぞれ挿入する。

15  同五〇枚目表一行目の「2」を「3」と改める。

同三行目から五一枚目表一一行目の「該当しない。」までを次のとおり改める。

「そこで先ず国公法上の争議行為の意義を明らかにしなければならないが、そのためには国公法上の争議行為禁止規定の立法的沿革を辿つてみる必要がある。前記2のとおり現業以外の公務員の争議行為の禁止を最初に打出したのが昭和二一年九月二七日制定の労調法であり、その七条は、争議行為を定義付け「業務の正常な運営を阻害すること」をその要件として掲げ、旧三八条において「警察官吏、消防職員、監獄において勤務する者、その他国又は公共団体の現業以外の行政又は司法の事務に従事する官吏その他の者は、争議行為をなすことができない。」と規定し、ついで昭和二三年七月一日制定の政令二〇一号により公務員は現業、非現業を問わず争議行為が禁止され、右政令の趣旨に沿つて国公法の改正により争議行為禁止規定が設けられ現在に至つているものである。したがつて国公法上の争議行為の意義は労調法上のそれと異なるところはなく、国公法上の争議行為が成立するためには業務阻害性を要するものである。

これについて本件をみてみると、本件職場大会は、次に述べるとおり、業務阻害性が全くなく、団結活動・組合活動であり、争議行為に該当しないものである。」

16  同五二枚目表一行目の「政府は、」の次に「毎年、」を挿入し、二行目の「毎年」を削除し、裏五行目の「正当であつた。」の次に「このことは、政府が昭和四五年以降人事院勧告を完全実施することを表明し、かつそれを実行してきたことによつて明らかである。」を加える。

17  同五三枚目表五行目の「監理員」を「管理員」と改め、六、七行目の「職員との関係においても、」を削除し、九、一〇行目の「できない時間であつて、特別の合理的な必要性がないかぎり」を「できず」と、一一行目の「は免除」を「が免除」とそれぞれ改める。

18  同五四枚目表六行目の「された」を「されて」と、末行の「3」を「4」と、同裏八行目の「4」を「5」とそれぞれ改める。

19  同五七枚目裏一〇行目の「5」を「6」と改める。

20  同五九枚目表四行目の「6」を「7」と、五行目の「違法性」を「違法性が軽微なこと」と、裏二行目の「そもそも」を「本件職場大会が違法であるとしても、その程度は軽微であり」とそれぞれ改め、一一、一二行目の「違反するとしても、」の次に「前記(一)のとおり」を挿入する。

21  同六〇枚目裏一行目から九行目の「さらに、」までを削除する。

22  同六一枚目裏三行目の「むしろ」から六行目までを削除する。

23  同六二枚目表四行目の「物語る」の次に「以外の」を挿入し、七行目の「及び」から一〇行目の「ものであること」までを削除する。

24  同六三枚目表一行目の「再抗弁に対する認否及び反論」を「控訴人らの主張に対する被控訴人局長の認否と反論」と、二行目の「再抗弁」を「控訴人らの主張」と、三行目の「再抗弁1」を「控訴人らの主張2」と、末行の「再抗弁2」を「控訴人らの主張3」と、裏二行目の「などに出ており」から三行目の「設けているが」までを「を始めその他の法律にもみられるが、次に述べる労調法の規定を除き」とそれぞれ改める。

25  同六四枚目裏二行目の「原告ら」から七行目まで削除する。

26  同六五枚目裏一〇行目の「関する総理庁令」を「関する総理府令」と改める。

27  同六六枚目表二行目の「同総理庁令」を「同総理府令」と改める。

28  同六七枚目裏一〇行目の「右義務」を「職務に従事する義務」と、一二、一三行目の「勤務時間内」を「出勤簿整理時間内」とそれぞれ改める。

29  同六八枚目表一行目の「当り」から三行目までを「当ることは明らかである。」と、末行の「一・二名」を「一、二名」とそれぞれ改める。

30  同六九枚目裏五行目の「再抗弁3」を「控訴人らの主張4」と改める。

31  同七〇枚目表七行目の「再抗弁4」を「控訴人らの主張5」と、裏四行目の「懲戒処分について(再抗弁5)」を「組合員の懲戒責任について(控訴人らの主張6)」とそれぞれ改める。

32  同七四枚目裏五行目の「企業秩序、」を「企業秩序及び」と、七行目の「争議行為と」を「争議行為を」とそれぞれ改める。

33  同七六枚目表七行目の「再抗弁6」を「控訴人らの主張7」と改める。

34  同八〇枚目表一行目の「そ」から四行目までを「甲第四八号証の一ないし一一が控訴人ら主張の写真であること及びその余の甲号各証の成立は認める。」と改める。

(控訴人らの主張)

本件職場大会における控訴人らの行為は国公法九八条二項後段の「そそのかし」「あおり」には該当しない。

すなわち、「そそのかし」とは同項前段所定の違法行為を実行させる目的をもつて、他人に対し、その行為を実行する決意を新たに生じさせるに足りる慫慂行為をすることをいい(最高裁判所昭和四四年四月二日大法廷判決・刑集二三巻五号六八五頁)、また、「あおり」とは右の目的をもつて、他人に対し、その行為を実行させる決意を生じさせるような、又は既に生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることをいい(最高裁判所昭和三七年二月二一日大法廷判決・刑集一六巻一〇七頁、同裁判所昭和四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻四号五四七頁)、これらの語意にふさわしい積極的な内容の行為、とりもなおさず当該争議行為の原動力と評価されてもやむを得ない行為を指しているものであるところ、本件職場大会は全運輸の全国大会で決定した方針と戦術に基づいて展開された行動であり、控訴人らは現場末端の分会長あるいは副分会長として本件職場大会においてあいさつをし、あるいは所長交渉の経過報告や決議文の朗読を行なつただけであつて、到底争議行為の原動力となつたものと評価することができない。

(被控訴人局長の主張)

控訴人らが引用している「あおり」「そそのかし」に関する最高裁判所の判例は刑事事件についてのものであり、この罪の構成要件は国公法九八条二項後段とは別に、同法一一〇条一項一七号に規定されていて、その規定の解釈は控訴人らが引用する判例にいわれているとおりであるが、他方、国公法九八条二項後段は国家公務員たる者の服務に関する規定であつて刑罰法規ではなく、従つて国公法一一〇条一項一七号と同法九八条二項後段とでは、それぞれ規定の目的や性質が異なるものであるから、両規定を全く同一に解さなければならない必然性は存しない。

仮に「そそのかし」「あおり」を控訴人らの主張のとおり解するとしても、本件職場大会において控訴人らが参加者らに対して行なつた「あいさつ」「職場大会の意義についての演説」「所長交渉の経過報告」「決議文の朗読」などの行為は「そそのかし」「あおり」に該当し、とりわけ「あおり」のうち「既に生じている決意を助長させる勢いのある刺激を与える」ことに該当するものである。

(証拠)<省略>

理由

一  当裁判所も控訴人らの各請求はすべて失当として棄却すべきものと判断するものであつて、その理由は、次のとおり付加・訂正するほか、原判決理由記載中控訴人らに関する部分と同一であるから、これを引用する。

1  原判決八一枚目表四行目の「右争いのない」を「右」と、六行目の「あること」から八行目の「原告らは」までを「あるところ、控訴人らは国公法九八条二項が」と、九行目の「再抗弁1」を「控訴人らの主張2」と、裏八、九行目の「当事者間に争いのない」を「右」と、末行の「給与」を「給与改定」とそれぞれ改める。

2  同八二枚目表六行目から七行目の「ものとして」までを削除する。

3  同八三枚目表三行目の「近畿陸運局」を「大阪陸運局」と、裏五行目の「当事者間に争いのない事実」を「抗弁2(二)(三)の事実は当事者間に争いがなく、右事実」とそれぞれ改める。

4  同八八枚目裏六行目の「当事者間に争いのない事実」を「抗弁2(四)及び3(三)(四)の事実は当事者間に争いがなく、右事実」と改める。

5  同九四枚目表七行目の「争議行為」から一〇行目の「主張し」までを「団結活動・組合活動であつて国公法九八条二項の争議行為には該当しないし」とそれぞれ改める。

6  同九五枚目表二行目の「そして」から九行目の「規定する」までを「そうすると、争議行為の要件として業務阻害性を要するものとしても、国家の業務はその性質上国民生活に密着しており、その停廃は国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼし、あるいはその恐れがあることを考えると、国公法九八条二項の争議行為が成立するためには、具体的な業務阻害の発生を必要とするものではなく、その発生の抽象的危険性があれば足りるものというべきであるから、勤務時間内の職場大会はそれ自体業務の正常な運営を阻害する行為であると解するのが相当である。この観点に立つて本件職場大会が右法条にいう」と、一一行目の「前記認定事実」を「前記1、2認定の事実」とそれぞれ改める。

7  同九七枚目表一行目の「内閣総理大臣は、」を「内閣総理大臣が定めた」と、二行目の「総理庁令」を「総理府令」と、八行目の「定め」を「規定し」と、裏一行目の「そして」を「成立に争いのない甲第一七号証及び弁論の全趣旨によると」と、三行目の「総理庁令」を「総理府令」と、九行目の「いるのである」から一〇行目までを「いることが認められる。」とそれぞれ改め、末行の「とおりであるが、」の次に「原審証人松浦大輔の証言及び弁論の全趣旨によると、」を挿入する。

8  同九八枚目八行目の「いうものであり」から一〇行目までを「いうものであることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。」と改める。

9  同九九枚目裏九行目の「勤務時間内」から一〇〇枚目表二行目の「できるから」までを「勤務時間内にくい込んで行なわれたものであるから同盟罷業に該当することは明らかであり」と改める。

10  同一〇〇枚目表七行目から裏一行目までを削除し、裏九、一〇行目の「されこそすれ」を「されるにとどまり」と改める。

11  同一〇一枚目表四行目の「国公法」から九行目までを「職員に対し同項前段の違法行為をなさしめるよう、あるいは右違法行為を助長させるよう仕向ける行為であつて、職員が右違法行為を行なうことに役立ち得る一切の行為を総称し、必ずしもこれによつて職員が現実に影響を受けることを要しないものと解するのが相当である。」と、末行の「給与」を「給与改定」とそれぞれ改める。

12  同一〇二枚目表二行目の「大会」を「集会」と、八行目の「行為は、」の次に「争議行為である本件職場大会を助長させるよう仕向けたものであり、」を挿入し、裏三行目の「再抗弁3」を「控訴人らの主張4」と改める。

13  同一〇四枚目表五行目から九行目までを削除し、一二行目の「不当労働行為」の次に「である」を挿入する。

14  同一〇五枚目表二行目の「第一の三」を「三」と、七行目の「本件各処分の意思表示」を「本件各処分」と、一〇行目の「前記2ないし5記載のごとく」を「控訴人ら主張のとおり控訴人らが職場組織の長たる地位にあつたことから」とそれぞれ改め、一一、一二行目の「原告らが職場組織の長たる地位にあり、」を削除する。

15  同一〇六枚目表五行目の「追求」を「追及」と改める。

16  同一〇七枚目裏二、三行目の「再抗弁6(一)ないし(五)のごとく」を「控訴人らの主張7のとおり」と、三行目の「まず右主張から」を「右主張について」とそれぞれ改める。

17  同一〇八枚目表二行目の「現に」を「本件職場大会が現に具体的に」と、四行目の「公共性と」を「公共性を無視し」と、六行目の「離脱したものであること」を「離脱して開催され」と、一〇行目の「ことは」を「ことを考えると」とそれぞれ改める。

18  同一〇九枚目裏七、八行目の「前記当事者間に争いのない事実及び認定事実から明らかなように」を「前記三に認定した事実によると」と改める。

19  同一一〇枚目表一行目の「又、」の次に「原審証人長谷川道弘、同松浦大輔の各証言によると、」を挿入し、七行目の「ことであり、そのため」を「触れ込みであつたため」と、九行目の「ものということ」から一〇行目の「各証言)」までを「ことが認められる」と、裏七行目から一一一枚目表六行目までを「政府は、公務員給与改定に関する人事院勧告を尊重しこれをできるかぎり実行するように努めることが望ましいのはいうまでもないが、公務員給与は、国民の税負担によつて賄われ、また世論の動向等も無視できないものであるので、その改定は、民間賃金との比較だけではなく、財政的、政治的その他諸般の事情をも勘案して適切に決定されるべきものであり、必ずしも人事院勧告に完全に拘束されるべきものではないから、たとえ政府が右勧告を完全に実行しなかつたとしても、その政治的責任を追及されるに至るはとも角、控訴人らの違法な争議行為を正当化する事由にはならないことが明らかである。

20  同一一一枚目裏一一行目の「原則一人として」を「原則として一人を」と改める。

21  同一一三枚目裏一行目の「被告局長」を「処分権者」と改める。

22  同一一五枚目表一二行目の「本件裁決」から末行の「本件裁決」までを「本件判定」と、同行の「裁決」を「もの」とそれぞれ改め、裏二行目から一一六枚目表二行目までを削除する。

23  同一一六枚目表一一行目の「裁決」を「判定」と、裏四行目の「ところである」を「余地がある」と改める。

二  そうすると、前記判断と同旨の原判決は相当であつて、本件各控訴はいずれも理由がないから、民訴法三八四条によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行訴法七条、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 仲西二郎 長谷喜仁 下村浩蔵)

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